犬の血液検査ガイド|主要項目の見方と基準値、獣医師への伝え方
犬の血液検査、ALTやBUNなどの項目は何を意味する?結果の見方と基準値、獣医師への伝え方をわかりやすく解説します。

犬の血液検査ガイド|主要項目の見方と基準値、獣医師への伝え方
健康診断や体調不良で動物病院へ行くと、血液検査をすることがありますね。検査結果の紙をもらっても、アルファベットの項目と数字ばかりで「これってどういう意味なんだろう?」「うちの子は大丈夫かな?」と不安に感じていませんか?
血液検査は、目に見えない愛犬の体の中の状態を知るための大切な手がかりです。しかし、専門用語が多くて戸惑うのも当然です。
この記事では、犬の血液検査でよく見られる主な項目について、それぞれの意味やどんなことがわかるのかを、初心者の方にも分かりやすく解説します。検査結果を正しく理解し、獣医師とスムーズに話すための参考にしてください。
🐾 この記事の要約(3つのポイント)
- 🐾 血液検査は、目に見えない体の状態を知り、病気の早期発見に繋がる大切な検査です。
- 🐾 ALT(肝臓)やBUN・CRE(腎臓)など、各項目が特定の臓器の健康状態を反映しています。
- 🐾 数値の解釈は単体で判断せず、獣医師の総合的な診断を聞くことが最も重要です。
この記事でわかること
- 犬の血液検査でよく見る主要項目の意味
- 数値が高い・低い場合に考えられること
- 検査結果について獣医師と話すときのポイント
- 定期的な健康診断で血液検査を受ける大切さ
まずは知っておきたい!血液検査の基本と主要項目
犬の血液検査は、大きく分けて「血球計算(CBC)」と「血液生化学検査」の2種類があります。血球計算では貧血や炎症の有無などを、生化学検査では内臓の働きや栄養状態などを調べます。
ここでは、特に飼い主さんが目にすることが多い「血液生化学検査」の主要な項目について解説します。これらの数値は、全身の健康状態を把握するためのパズルのピースのようなものです。一つの数値だけで判断せず、全体のバランスを見ることが大切です。
以下は、代表的な検査項目とその意味をまとめた表です。ただし、これはあくまで一般的な目安であり、犬種や年齢、検査機関によって基準値は異なります。
| 検査項目 (略称) | 主に関連する臓器・状態 | 高い場合に考えられること(一例) | 低い場合に考えられること(一例) |
|---|---|---|---|
| ALT (GPT) | 肝臓 | 肝細胞の障害、肝炎、薬の影響 | (臨床的意義は低いことが多い) |
| AST (GOT) | 肝臓、筋肉、心臓 | 肝細胞や筋細胞の障害 | (臨床的意義は低いことが多い) |
| ALP | 肝臓、胆道、骨、副腎 | 胆汁うっ滞、骨の成長、副腎皮質機能亢進症 | (臨床的意義は低いことが多い) |
| BUN (尿素窒素) | 腎臓、脱水 | 腎機能低下、脱水、高タンパク食、消化管出血 | 肝機能低下、栄養不良、尿量増加 |
| CRE (クレアチニン) | 腎臓、筋肉量 | 腎機能低下 | 筋肉量の低下(高齢犬など) |
| GLU (血糖値) | 膵臓、ホルモン | 糖尿病、ストレス(特に猫)、食後 | 肝機能低下、インスリノーマ、子犬の低血糖 |
| TP (総タンパク) | 栄養状態、脱水、肝臓、腎臓 | 脱水、慢性炎症、感染症 | 栄養不良、肝機能低下、腎臓病、消化管疾患 |
| ALB (アルブミン) | 肝臓、栄養状態、腎臓、消化管 | 脱水 | 肝機能低下、腎臓病、消化管疾患、栄養不良 |
| Ca (カルシウム) | 副甲状腺、腎臓、骨、腫瘍 | 上皮小体機能亢進症、一部の腫瘍、腎臓病 | 上皮小体機能低下症、腎臓病、産後の低Ca血症 |
これらの項目を見て「うちの子の数値が高い!」とすぐに心配になる必要はありません。例えば、食後に血糖値が上がったり、ストレスで一時的に数値が変動することもあります。大切なのは、その数値が何を意味する可能性があるのかを知り、獣医師の説明をしっかり聞くことです。
💡 お家でできる飼い主チェックリスト
血液検査の数値をどう読み解く?基準値と獣医師との対話のポイント
検査結果の用紙には、愛犬の測定値の横に「基準値」や「正常範囲」が書かれています。この範囲から外れていると、つい心配になってしまいますよね。しかし、この基準値はあくまで「健康な犬の多くがこの範囲に収まる」という目安です。
大切なポイントは3つあります。
-
個体差を考慮する 犬種、年齢、性別、生活環境によって、その子にとっての「正常」は異なります。例えば、成長期の子犬は骨の成長に伴いALPという数値が高くなることがありますし、筋肉質な犬はCREがやや高めに出ることもあります。
-
他の数値との関連を見る 獣医師は、一つの項目だけでなく、複数の項目を組み合わせて総合的に判断します。例えば、腎臓の項目であるBUNとCREが両方とも高い場合は腎機能低下の可能性が高まりますが、BUNだけが高い場合は脱水や食事内容の影響なども考えられます。
-
過去のデータと比較する 定期的に健康診断を受けていると、その子の平常時の数値がわかります。基準値の範囲内でも、過去のデータと比べて急激に数値が上がったり下がったりしている場合は、何らかの変化が起きているサインかもしれません。愛犬だけの「健康の基準」を持つことが早期発見に繋がります。
獣医師から結果説明を受ける際は、不安な点や疑問に思ったことを遠慮なく質問しましょう。「この数値が高いのは、どんな原因が考えられますか?」「今後、家で気をつけることはありますか?」など、具体的に聞くことで理解が深まります。
スクリーニング検査と精密検査の違い
一般的な健康診断で行われる血液検査は、「スクリーニング検査」と呼ばれるものです。これは、体に異常がないか広く浅くチェックし、問題の可能性を探るための入り口のような検査です。
もしスクリーニング検査で異常が見つかった場合、獣医師は原因を特定するために「精密検査」を提案することがあります。例えば、以下のような検査です。
- ホルモン検査:甲状腺や副腎など、特定のホルモンの異常を詳しく調べます。
- 画像検査:レントゲンや超音波(エコー)検査で、臓器の形や大きさ、内部の構造を確認します。
- 尿検査:血液検査と合わせて見ることで、腎臓病や糖尿病の診断精度が高まります。
- 感染症検査:特定のウイルスや細菌、寄生虫の感染を調べます。
スクリーニング検査で異常値が出たからといって、すぐに重い病気だと決まったわけではありません。「より詳しく調べるためのステップに進んだ」と捉え、落ち着いて獣医師の説明を聞きましょう。飼い主さんが一番迷いやすいポイントですが、次の検査に進むかどうかを判断するためにも、なぜその検査が必要なのかをしっかり確認することが大切です。
定期的な健康診断で血液検査を受けるメリット
言葉を話せない愛犬にとって、血液検査は「体の中からのお便り」のようなものです。特に症状が出ていない元気なうちから定期的に検査を受けることには、大きなメリットがあります。
-
病気の早期発見:多くの病気は、症状が出る前に血液の数値に変化が現れます。特に腎臓病や肝臓病などは、症状が出たときにはかなり進行しているケースも少なくありません。定期的なチェックが、早期治療の鍵となります。
-
愛犬自身の基準値がわかる:先述の通り、毎年検査を受けることで「うちの子の平常値」を把握できます。これにより、わずかな変化にも気づきやすくなり、より精度の高い健康管理が可能になります。
-
シニア期への備え:犬は7歳頃からシニア期に入ります。年齢とともに様々な病気のリスクが高まるため、シニア期になったら半年に1回程度の健康診断が推奨されます。若い頃からのデータを蓄積しておくことで、加齢による変化なのか、病気のサインなのかを判断しやすくなります。
健康診断は、愛犬が健康な毎日を長く過ごすための、飼い主さんからの最高のプレゼントです。獣医師と相談しながら、愛犬に合ったペースで受診を計画しましょう。
よくある質問(FAQ)
Q1. 血液検査の前は絶食が必要ですか?
A1. はい、基本的には絶食が必要です。食事をすると血糖値や中性脂肪などの数値に影響が出るため、正確なデータを得るために検査前の10〜12時間程度の絶食が推奨されることが多いです。お水は飲んでも大丈夫です。ただし、子犬や持病がある場合など、状況によって指示が異なるため、必ず動物病院の指示に従ってください。
Q2. 検査結果が基準値から少しだけ外れているけど大丈夫?
A2. 必ずしも心配な状態とは限りません。その日の体調やストレス、個体差などでわずかに変動することはよくあります。獣医師は、その数値だけでなく、他の検査項目や触診などの身体検査、問診の内容を総合して判断します。気になる場合は、再検査や経過観察をすることもありますので、まずは獣医師に相談しましょう。
Q3. 血液検査の費用はどのくらいかかりますか?
A3. 費用は動物病院や検査する項目の数によって大きく異なります。一般的なスクリーニング検査であれば数千円から1万円程度が目安ですが、特殊な検査や精密検査を追加するとそれ以上になることもあります。健康診断のパッケージプランなどを用意している病院もあるので、事前に問い合わせてみるとよいでしょう。
まとめ
血液検査の結果を理解することは、愛犬の健康状態を知り、獣医師と協力して最適なケアを選択するための第一歩です。要点を以下にまとめます。
- 血液検査は、肝臓、腎臓、栄養状態など、体の内部の状態を知るための重要な手がかりです。
- 各項目には意味がありますが、一つの数値だけで一喜一憂せず、全体のバランスを見ることが大切です。
- 「基準値」はあくまで目安。愛犬自身の過去のデータと比較することが、変化に気づく鍵になります。
- 検査結果の解釈は、必ず獣医師に委ねましょう。不安なことは積極的に質問してください。
検査結果の難しいアルファベットや数字も、愛犬の健康を守るための大切な情報です。この記事が、飼い主さんと愛犬、そして獣医師とのコミュニケーションをより円滑にする一助となれば幸いです。日頃から愛犬の様子をよく観察し、定期的な健康診断を心がけていきましょう。
🐾 愛犬・愛猫ケアのミニクイズ!
Q. 血液検査の結果で「BUN」や「CRE」という項目が基準値より高かった場合、主にどの臓器の働きに注意が必要と考えられるでしょう?
- A) 肝臓
- B) 腎臓
- C) 心臓
【正解】 B) 腎臓
【解説】 BUN(尿素窒素)とCRE(クレアチニン)は、主に腎臓のろ過機能を示す重要な指標です。これらの数値が高い場合、腎機能の低下が疑われることがありますが、脱水など他の要因も考えられます。必ず獣医師の総合的な診断を受けてください。
関連記事
参考情報
- 獣医学論文
- 大学・公的機関
- 獣医療関連学会



